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寒い夜に窓の外からカメラを構えて女は言う。
「ファインダー越しに見る景色はいつも悲しい…」
男は女に近づき聞いた。
「どうしてですか?」
女はカメラのシャッターを押しながら言った。
「ファインダー越しに気持ちは届かないからよ」
男は首を傾げながら聞いた。
「どうしてですか?写真になれば気持ちは届くハズ…」
女は首を振り言った。
「写真とファインダーは違うわ、ファインダーは肉眼で見たくないものも自分の眼に映してしまう……だから儚くて悲しい…」
男は女の肩を掴みながら言った。
「そんな悲しいカメラなら捨ててしまえばいい!」
女は涙を流しながら言った。
「私にはカメラしかないの、この現実から目を逸らす自分に罰を与えるように少しのフィルターをかけてファインダーのせいにするのが私にとって今は精一杯だから奪わないで……私の目を……」
男は静かに女の肩から手を外して言った。
「あなたの眼が現実を受け止められるようになったらあなたのカメラのファインダーで僕を映してください……きっと悲しく映ったりしませんから……」
そう言って互いは背を向き歩き出した。
またあなたのカメラに映れると信じて……
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