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「私が見てる世界って本物かしら」
「また何か言ってる」
「だって丸く見えたものが、眼鏡をかけると四角くなることがあるのよ」
「それは視力のせいだろ?」
「そうだけど、そういうことじゃないの」
「んー」
彼女の言うことは時々難しい。
「だから撮るの」
「ふーん?」
「私の目には白く見えるこの雪も、本当は違う色かもしれないから」
彼女が白だと思うならそれでいいじゃないか。そう思うけど口にはしない。俺にはよくわからないけど、それはたぶん彼女にとって重要なことなのだろうから。
「じゃあ今日は雪の色を確かめに来たんだ?」
「それなら貴方を呼ばないわ」
「え?」
「私の目に、貴方は誰よりも輝いて映るから」
「へっ!?」
「私の瞳と、このカメラが映す貴方が同じなら、きっと本物だって信じられるでしょ?」
「……本物って?」
「それは」
「それは?」
俯いた彼女が視線だけ俺に向けて告げる。
「現像してからの、お楽しみ」
悪戯っぽく笑う彼女が、俺の瞳の中でキラキラと光った。
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