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*** AV ***
モニターの画面には、今さっき丈偉が撮ったばかりのテレビ局スタッフの裏方作業が映し出されていた。彼はその映像が、まるで隠し撮り動画のようだと思った。
「さっきよりは、いいかもしれませんね。あとは、そうだな、脇をちゃんと締めて三点で固定するっていう感じかな? もう一回、やってみますか?」
「あー、ちょっと休憩してもいいですか? 肩がバキバキになっちゃって」
「いいですよ。また、声かけてください」
「ごめんね、ありがとう」
丈偉につきっきりでカメラ操作を指導していたスタッフは、テーブルを離れ部屋から出ていった。彼はひとりになった会議室で大きく伸びをして、カメラを載せていたほうの肩を回した。それからテーブルの上に置かれた書類の束を手に取った。上から下へとざっと目を通して、と次から次へと書類をめくっていく。そして最後のページでその手が止まり、ゆっくりと読んだ。
「マジかよ」
思わず彼はつぶやいていた。
ひとりの女性が靴音高く会議室に入ってきた。
「あら、いたの」
女は丈偉の向かいに座ると、持っていたペットボトルのふたを開けて中身を一気に半分飲んだ。
「まさか発声練習からやらされるとは。もう、のどがカラっカラ」
「相沢さん、これ読んだ?」
丈偉が書類の表紙を女に見せて言った。女はネイルの美しく整えられた手で、男から書類を受け取った。
「インタビュー内容? 見た見た。都市伝説の真偽をぶつけてみるってやつでしょう? ふざけてるよね。バラエティー番組の突撃取材じゃないんだから。こんなのまともに質問したら、こっちの品性疑われるわ」
「だよな? まあ、実際インタビューするの君だからいいんだけどさ」
「あなたがインタビューしてもいいんじゃない? ドキュメンタリーとかで、カメラ撮ってる人が被写体と会話しながら進めるやつあるじゃない」
「アダルトビデオみたいの?」
「そう、それ!って見たことないから、わたしは」
女が言うと、丈偉は意味ありげに笑って見せた。
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