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「とにかく、話を元に戻すけど、これ差し戻して、もっと社会派な内容にしてもらおう。どっちみち向こうは向こうでチェック入れてくるだろうし、要らぬ反感は買いたくないからな」
男が真顔で言うのを聞いていた女は、急に何かを思いついたように、人差し指を相手に向けた。
「逆にそれが狙いなのかも。怒らせて本音を引き出す、みたいな」
女が言うのを聞いて、丈偉は向けられた指をそっと手で包んだ。
「相手が相手だ。洒落になんないよ。消されるかも知れないぞ。それに挑発行為は視聴者にも印象悪い」
相沢梨々香は背中がぞくっとして戸惑った。それが不安からなのか、握られた指のせいなのか、彼女は自分でも区別がつかなかった。
「それ、テレビ局関係者っぽい。いつから視聴率を気にするようになったの? ま、あとは鈴木さんにお任せします」
女はそう言って指を引き抜いた。
「それでよし」
「何それ。あたしのほうが先輩なの知ってた?」
お互いにそんなことを気にする間柄ではないのはわかっていた。
女はまた飲み物を飲んだ。
「そう言えば、佐々木さん見た? 今日来てるはずなんだけど、連絡とれないんだよ」
「さあ、わたしも見てないけど?」
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