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2年前、私とあの人は出会った。
父が以前から不倫をしていて、母はアルコールに頼るようになった。
どちらが原因かわからないけど、二人は毎日のように喧嘩していた。
父は私に母とは違う完璧な女性になる事を求めた。
良妻賢母になる為に、しっかり勉強するように……と。
母は毎日父の愚痴をこぼして、父みたいな人とは結婚しないように、と私に言った。
二人の間で私はいつも気持ちが不安定だった。
家に帰りたくなくて、普段からよく外出していた。
友達の家を転々としていたけど、だんだん泊めてくれる友達もいなくなって、仕方なくコンビニで時間を潰している時だった。
「家出?」
突然見知らぬ男性から話しかけられた。
髪は茶色に染めてて、耳にはピアス、見るからに軽い感じの人。
「そんなところです。」
「ふぅーん。
少し遊ぶ?」
あからさまに言われて、さすがに私は身構える。
「ああ、襲ったりしないから安心して。
俺んちさ、母親が家に男をとっかえひっかえ連れてきて、それが嫌で家を出たんだ。
父親は誰だかわかんないんだって。
だからそういう愛のない欲望を満たすだけの行為って言うの?嫌いなんだよね。」
私は初対面の人に重い話を突然されて固まってしまった。
そんな話を信じてもいいのだろうか。
でも何故か
『この人は信じられる。』
そう思った。
「俺、坂本 裕也 ハタチ
そこの作業所で働いてるんだ。
いつも5時に終わるから、暇な時は遊びに来てよ。」
あまりにもあけすけに話すから、私は自分の事をどこまで話していいかわからない。
「君、名前は?」
「香川 由樹」
「歳は?」
「18」
「高校生??」
「はい。
でも、来月卒業します。」
「進路は?」
「この先の工場に…」
「じゃあ近くだね。」
そう言うと彼は人懐こい顔で笑った。
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