北町夜話

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   ※   ――己の輪郭さえ溶けてしまった闇の中。  宗右衛門(そうえもん)は徒広い座敷でひとり、化野(あだしの)に打ち捨てられた数知れぬ(しかばね)を想い――震えていた。  折り重なり()け崩れてひとつになった女たちが、目ばかりくっきりと(みは)り、いっせいに自分を見るのだ。  この震えは(おび)えではなく(よろこ)びだ。  期待しているのだ。  見られることに。  沢山(たくさん)の死んだ目に。腐れた目に。(とろ)けた目に――。  宗右衛門は、叫びだしたくなる衝動を歯を食いしばってこらえた。  ――そんなことになったら、おれはどうなってしまうのだ。きっと気が違ってしまうに違いない――。  それとも既に狂っているのか。
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