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――己の輪郭さえ溶けてしまった闇の中。
宗右衛門は徒広い座敷でひとり、化野に打ち捨てられた数知れぬ屍を想い――震えていた。
折り重なり融け崩れてひとつになった女たちが、目ばかりくっきりと瞠り、いっせいに自分を見るのだ。
この震えは怯えではなく悦びだ。
期待しているのだ。
見られることに。
沢山の死んだ目に。腐れた目に。蕩けた目に――。
宗右衛門は、叫びだしたくなる衝動を歯を食いしばってこらえた。
――そんなことになったら、おれはどうなってしまうのだ。きっと気が違ってしまうに違いない――。
それとも既に狂っているのか。
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