北町夜話

14/18
前へ
/18ページ
次へ
「どうかなさったんでぇ」  おずおずと見あげてくる小物の暗い顔を、宗右衛門は見返した。 「どうしたも何も、今、おぬしと――」  宗右衛門ははたと口を(つぐ)んだ。  ――あれは、本当に小物の声だったろうか。  微妙に違っている気もする。思い出そうとしても今となってはひどく曖昧(あいまい)模糊(もこ)としているが、こんなはっきりとした声などではなく、もっと(うす)ぼんやりとした――(おのれ)の身の内から聞こえてきたような気もする。  ――なれば誰と話をしていたのか。  闇が、一層に濃くなった気がした。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加