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「どうかなさったんでぇ」
おずおずと見あげてくる小物の暗い顔を、宗右衛門は見返した。
「どうしたも何も、今、おぬしと――」
宗右衛門ははたと口を噤んだ。
――あれは、本当に小物の声だったろうか。
微妙に違っている気もする。思い出そうとしても今となってはひどく曖昧模糊としているが、こんなはっきりとした声などではなく、もっと薄ぼんやりとした――己の身の内から聞こえてきたような気もする。
――なれば誰と話をしていたのか。
闇が、一層に濃くなった気がした。
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