北町夜話

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 小物は嫌そうに眉根を寄せた。 「そりゃあもう、(おびただ)しい数でさぁ。――して、屍臭(ししゅう)は風に運ばれ二里三里。蛆集(たか)れころろく肉叢(ししむら)のうえを飢えた禽獣(きんじゅう)跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)せる(さま)まっこと(すさ)まじき。()ちた白帷子(しろかたびら)(まと)わせたしゃれこうべは草木(そうもく)に――」  宗右衛門は唾を飲み込んだ。 「――み――見て来たように言うではないか」  見てきたのか、と問う宗右衛門に、小物は――否、まさか――と諸手(もろて)をあげた。 「そんなおっかねぇもんわざわざ見にゆく酔狂(すいきょう)じゃぁありませんよぅ」  ――見に行くのではない、見られに(・・・・)ゆくのだ。  それに――小物は、つ、と目を上げた。
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