北町夜話

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(これ)徒然草(つれづれぐさ)は――時は平安のころの御咄(おはなし)。手前は種さえ出来ちゃおりません。昔噺(むかしばなし)でございますよ」  何――宗右衛門は、小物の昏い目を見た。 「化野(あだしの)はもう――きれいに片付けられていやす」 「何だとっ」  突如声を荒げた上役にも動じることなく、小物は――ですから、と続けた。 「弘法大師(こうぼうだいし)様が菩提(ぼだい)(とむら)って、打ち捨てられた(ほとけ)念仏寺(ねんぶつじ)八千の石塔の下に安らかに眠っております――有難(ありがて)ぇこった」
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