北町夜話

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 小物が家の者を下がらせるのを待って、宗右衛門は(むしろ)をめくった。途端、強い白粉のにおいと、金臭(かなくさ)さが鼻をついた。  (しかばね)は女だった。  血走った(まなこ)をかっと見開き、叫んだままの口の端から乾いた血筋がつうと伝っていた。塗られた(べに)がそのままこぼれたかのようだった。  さらされた喉が一文字に引き裂かれていた。()ぜた柘榴(ざくろ)のようである。  小物が、女は家の(あるじ)の一人娘で歳のころは十七だと()った。 「なんにせよ、むごいことです。花も恥じらう小町でも、こうなっちゃあ、お(しめ)えでござんすねぇ」  まったくだ、と宗右衛門は死に顔に目を落とす。
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