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宗右衛門はあのような目で女に見られたことなどなかった。女に縁がなかったわけではない。むしろ一端に遊んできたからこそあの目は脳裏に焼きついた。
屍の眼差しは果てしなく昏く、とろりと濃密で純粋な闇だった。それに比べれば生きている女の目など薄っぺらくて、生臭くて、浅ましい底が見えて――本当に厭になる。あんな厭な目をした女たちと今まで平気で情を交わしていたことがまったく信じられない程だった。
宗右衛門は、屍の眸の黒さに死そのものを見ていた。
もう、絡め取られて逃げられそうもない。
そんな矢先、奉行所から上京の達しがあったのだった。
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