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「お前、嘘つきだもんなっ」
「え?」
何か優しい言葉でもかけてくれるなんて、馬鹿なことを考えていた。
図々しい。それに恥ずかしい。
安心させてくれるなんて期待していた。
怒っているのに、この子は。
”そして今も?
──それは分からない”
「大嫌いだよ。お前なんか」
なんだよ……もう!
色々伝えたいことがあるのに!
あの子にそんなことを言われ、我慢していた感情が一気にふきだした。
だけど涙声で上手く喋れない。
「なっ……なん……で、そんな……こと言う……の」
そんなわたしを見てあの子は、罰の悪そうな顔をした。
罪悪感を感じた顔をした──ようにわたしには見えた。
それにまた期待した。
「あの、あの……さァ、……ッ」
泣きながら、嗚咽交じりに言葉に詰まる。
まるで叱られた小さな子供のように。
「あの……、ッ、さ……、ッさぁ」
しゃっくりみたいな、嗚咽が邪魔をして上手く話せない。
思いを伝えられない。
「落ち着いて。ちゃんと最後まで訊くから。ゆっくりで良いから全部話してよ」
そんなことを、言って欲しかった。
やっとの思いで、わたしの口から出た言葉は──。
「嘘なんかついてないもん!」
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