嘘つきは嫌いだ

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 引越しを伝えれなかったのは、わたしが悪いと思った。  でも、嘘をついたわけじゃなかった。怖くてただ言い出せなかっただけだ。  保育園の頃からずっと一緒だった。なのに引越しのことを言っても、「うん。じゃあ元気でな」なんて、素っ気なく言われるんじゃないか怖かった。  わたしと”同じ”だと思ってたのは、実は自分だけだったって、気づくのが怖かった。  また踏み切りが鳴り始めた──。  枕木を打ちつけるような、こもった音が遠くのほうで聞こえる。  音は次第に大きくなる。  電車の音が近づいて来ている──。  遮断機が一本、ゆっくりと下りる。  それを追いかけるように、もう片方も下りようとしていた。  あの子は何も喋らない。  もうこれで”最後”かもしれない。  だから、訊いておきたい。
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