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「ほら、もう忘れてる」
一切の音が止んだ──。
数メートル先で、ゆっくりと電車が通り過ぎている。
なのに、音は何も聞こえない。
あの子の視線は、わたしを誘導するように線路脇を指していた。
「あ……」
視線で指した先は、錆びれたプレハブの壁に覆われた空き地。中がどうなっているか、今も分からない。
ここはわたしが幼稚園の頃から、もうずっと長年放置されている。
あの子が言った。
「キス」
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