嘘つきは嫌いだ

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 兄はなんのことだか分からず小首を傾げ、視線を逸らしたけれど、わたしたちのほうへ意識を向けているのが分かった。  年の離れた”大人な兄”の、その態度がなんだか可笑しかった。  こうなったらもう、なんだって楽しく思える。  わたしは色紙を手渡した。  なのに……。 「やっぱ、また今度にする」 「なんで!?」  また今度なんかないから、わたしはこんなにも悲しかったのに……。あの子の真意が分からない。 「だってお前、嘘つきだもん」 「わたしは嘘つきじゃない!」  兄がぎょっとして、顔を向けたのが分かった。  わたしは次の言葉を待った。  さっきの”アレ”は、なんだっただろう。  あの子は、ふぅと一息入れた。 「じゃまた会った時に、約束、守れよ……」 「約束?」 「うん約束。俺は憶えてるから」  そう言うと、じゃっ! 走り去って行った。  その姿をわたしは目に焼きつけた。  約束。  きっとあのことを言っているんだ。  ***
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