七日を飾る花

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アヤカシ達を見送った後、私達は片付けを後回しにして各々休憩に入りーー潜り込んだ布団の中、私は不思議な夢を見た。 月と星が瞬く空の下、見たこともない花畑に立っている私。 足元の花は折れたり枯れてしまっていて、まるで嵐に襲われた後のよう。 ふと気配を感じて振り返ると……そこにいたのは、婚礼衣装に身を包んだ綺麗な女の子。 艶やかな黒髪は真っ白な花に彩られ、花畑を優しく覆うように広がっている。 ――ありがとう、 声が聞こえた気がして顔を上げると、女の子が自分の胸元を指し示した。 婚礼衣装を覆う白い薄衣。それをまとめた胸元には、レースのリボンで飾り付けたバラのブローチ。 頬を染めて瞳を細めて、女の子は心から幸せそうに微笑む。 ――ありがとう。 ――どういたしまして、お幸せにね。 自分の声が遠くに聞こえる。届くか心配だったけれど、女の子は嬉しそうに頷いてくれた。 それだけで胸が一杯になる。彼女の幸せが私にまでうつったみたい。 私は彼女につられるように笑って、温かい気持ちで目を閉じた。 「……ん?」 目を覚ますと、そこは幻橋案の自分の部屋だった。 なんてご都合主義な夢だろう。でも、いい夢だったな。 ぼんやりと考えながら起き上がると、枕元に何かが置かれていることに気付いた。 「これ…」 それは一輪の花。手に取ると瑞々しい茎の先で、スイセンに似た白い花が静かに揺れる。 私は花に笑いかけると、お祝いの言葉をもう一度呟いた。 「……お幸せに、ね」
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