七日を飾る花

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やがて、お客さんは小さく頷いた。 「良い。七日花のような良い香りはないが、これならば代わりに使えそうだ」 「ほ、ほんとですか!やったー!」 長時間歩き回った甲斐があった! 私は嬉しさのあまり、ぐっと拳を握る。 「礼を言うぞ、人の子よ」 「これは俺では思いつかん策だな。でかしたぞチビ春」 「このために朝早くから出かけていたんだね。ありがとう、小春」 白い花を大切そうに抱えて頭を下げるお客さん。私の頭をくしゃくしゃっと乱暴気味に撫でる左門さんに、肩を優しく叩いてくれる右門さん。 みんなの言葉が嬉しくて、走り回った疲れが吹き飛んでしまう。 「よし、チビ春がここまで力を尽くしたのだから俺達も何かせねばな。髪飾り作りを手伝おうではないか」 「ちょっと待って左門、明日の営業は?」 左門さんは腕まくりをすると、問いかける右門さんにニヤッと笑って見せた。 「休業だ!急務であるからな!」 「えー……」 呆れる右門さんを他所に、左門さんはアヤカシのお客さん相手に髪飾り作りの打ち合わせに入ってしまう。 「お前のところに細工師がおるだろう?呼べ、今すぐ呼べ。お前の仲間も呼べるだけ呼べ。使える手は何でも使うぞ」 「承知した。場所はこの店で構わんな?」 「無論。軽食ぐらいは出してやろう。その代わり、チビ春の出張費と場所代、手伝いも含めてそれなりのものをそれなりに頂く」 「……千花様の為だ。いいだろう」 どんどん話が先に進んで行ってしまう中、ぽつんと残された私と右門さん。 「右門さん……これで良かったんでしょうか?」 「まぁ、左門は言い出したら聞かないから……」 私が尋ねると、右門さんは諦めたように頬をかいた。 そして、くしゃくしゃになった私の髪を整えながら、「お疲れさま。がんばったね」と微笑んでくれたのだった。
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