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「おい左門、手順が違うではないか」
「ふっ、お前達は何もわかっておらんな。見ろ、ここをこうすれば……」
「なんと!我らの何倍も早く仕上げてきたぞ……!!」
盛り上がっているなぁ……。
左門さんが器用なのは本当だったみたいだけど、テンションがおかしい気がする。
お店から聞こえる声に耳を傾けつつ、私はサンドイッチと右門さんの淹れてくれたコーヒーを頂きながら小休憩に入っていた。
ブラックが飲めない私のためにと、ミルクとお砂糖を入れたコーヒー。飲むたびに香りと程よい甘さがじんわり広がって、疲れた体を癒してくれる。
そんな癒し系の右門さんは、サンドイッチとコーヒーをみんなの元へ運んでいるところだ。
私はコーヒーを飲み干して一息つくと、次の作業に入るべく小さな紙袋を取り出す。
お店も私の部屋もアヤカシ達に占領されているから、ここを使わせてもらおう。
作業台に材料を並べると、私は作業に取り掛かった。
「ごめんね小春、まだ時間がかかるみたいだ」
作業に没頭していると、右門さんが厨房に戻ってきた。
時計は丑三つ時をとっくに過ぎている。これは明け方までかかるかもしれないな。
「せめて小春の部屋だけでもあけてくれるよう頼んでくるよ」
「いえいえ、大丈夫です!作業に集中してたら悪いですし。私もやる事がありますから」
「やる事?……ああ」
首を傾げる右門さんに、私は作りかけのそれを見せる。
それでだけで私が何をしようとしているのか気付いたのか、「分かった」と頷いてくれた。
「コーヒーのお代わりはいるかな?」
「はい、頂きます!」
右門さんは私の手元に視線を落とすと、穏やかに微笑んだ。
「……喜んでもらえるといいね」
「――はいっ!」
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