雨のにおい

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雨のにおい

「雨のにおいがする」  くんくん、と空に向かって鼻をひくつかせながら、ミウが言った。 「マジで!?  傘、持ってった方がいい?」 「う~ん……夜までは持つと思うけど」  ミウは天気予報の達人だ。  四年前、海に近い田舎町からオレんちの隣に引っ越してきた彼女は、大気のにおいから天気の移り変わりを予想することができる(らしい)。 「そっかぁ、どーすっかなぁ。今日、カノジョとデートなんだよ」 「あっそ」  ミウがつまらなそうに、そっぽを向いた。  「ま、夜まで降らないなら、とりあえず大丈夫か」  オレは傘を持たずに、待ち合わせ場所のカフェへと向かった。
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