小学生

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男子の中で、奏は、密かに人気があり、どう接していいか分からないアホな男子が奏をいじめるなんて事は日常茶飯事だった。 その度に、俺は、奏をかばって戦い、正義のヒーローを勝手に気取っていた。 そうこうしているうちに、あっという間に夏休みになった。 休みになると、その頃、既に親友と化していた母たちが、互いの家を行き来するのに連れられて、俺と奏もお互いの家を行ったり来たりするようになっていた。 学校では、周りの目を気にしてあまり奏を誘えなかったが、こうして2人きりだと何をしても楽しくて嬉しくて仕方ない。 お絵かきをしたり、ゲームをしたり、奏にピアノを教えてもらったり、逆に奏にバイオリンを教えてやったり…。 そんなある日、母が奏の発表会を見に行くと言い出した。 俺は母に連れられて、地元の市民会館にやってきた。 まだ小学生の俺には、ピアノの発表会がどんなものなのか、想像もつかなかった。 単純にステージでピアノを弾く…としか思ってなかったのだ。 だから、奏が、淡いピンクのふわふわのドレスでステージに登場した時、とても驚いた。 やっぱり奏はお姫様だった! それはもう、絵本から抜け出したようで、俺は口をあんぐり開けて、奏に見とれていた。 発表会終了後、母と一緒に奏の所に行くと、母が、 「奏ちゃん、上手だった~!」 と褒めていた。 「ね? 優音?」 「うん。」 母に同意を求められて頷いたが、正直、俺は、奏に見とれ過ぎて、演奏は全く頭に入って来なかった。 「ドレスもかわいいし~。 あぁ、うちにも女の子が欲しかった~。 奏ちゃん、将来、優音のお嫁さんになって、 うちの子になってね。」 俺は聞いてないふりをしたが、母のその意見には激しく同意していた。 だけど、奏は、曖昧に微笑んだだけだった。 もしかしたら、突然のお嫁さん発言に苦笑してたのかもしれない。 残念………
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