大学生

1/6
902人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ

大学生

・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ 大学生 ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ ─── 18歳 春 ─── 俺たちは、大学生になった。 俺は、東京の難関国立大に無事合格したため、一人暮らしを始める事になった。 奏は、地元の国立大。 4年間、離れ離れだ。 出発の前の日、奏は、俺の部屋にいた。 また、母の策略だった。 「ゆうくんとは、離れててもいつでも会えると 思ってたけど、明日からはもう会えないん だね。」 奏が寂しそうに俯いて言った。 肩が少し震えて見えた。 俺は、思わず、奏を抱き寄せた。 「奏が会いたいって言ったら、俺はいつでも 帰ってくる。 新幹線なら、ほんの2時間の距離だから。」 奏の華奢な体は、力を入れたら、折れてしまいそうだった。 奏は、逃げる事も、拒む事もなく、俺にされるがままに抱き寄せられていた。 俺が体を離すと、奏は顔を背けた。 涙を拭っているようだった。 俺は、もう一度、背中から抱きしめた。 「奏、俺の事、忘れないで。 俺は、奏の事、絶対に忘れないから。」 奏はこくんと頷いたきり、何も言わなかった。 しばらくして、奏は、胸の前にある俺の手を解いて、俺の方に向き直った。 「ゆうくん、東京でもがんばって。 応援してるから。」 そう言って、にっこり笑った奏の目は赤かった。 俺はこの時の奏の顔を、一生忘れないだろう。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!