正月

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ピザを食べ終わって、ワインを出す。 「こっちでまったり飲も。」 そう言って、ソファの前のローテーブルにワインとつまみを運んだ。 俺がソファに座ると、奏はソファを背もたれにして、センターラグに直接座り込んだ。 「何で、そこ?」 思わず、笑ってしまった。 「ん、なんかここが落ち着く感じ?」 俺は膝に奏の肩を感じながら、奏を見下ろす。 奏はワインを一口含むと、話を切り出した。 「ゆうくん、ゆうくんはもしかしたらあんまり 聞きたくない事かもしれないけど、聞いて 欲しい事があるんだ。」 「ん、何?」 聞きたくない事? 悪い話の方だったか? 「………あのね、私、1年前のお正月にね、 ………プロポーズされたの。」 俺は驚き過ぎて、固まった。 「…うん。それで?」 「3年位付き合ってた人でね、自分から好きに なった人じゃないけど、私をとても大切に してくれてね、真剣に愛してくれてる人だと 思ったから、この人と一生寄り添って 穏やかに生きて行こうって思ったの。」 「……うん。」 「だけど、ひと月後のバレンタインの日に、 『他に好きな人が出来たから別れよう』って 言われてね、もう誰も信じられなくなって、 東京から逃げ帰ってきたの。」 「………バレンタインって、奏の誕生日 じゃん。」 俺は、奏がプロポーズされた事より、奏が振られた事より、奏を誕生日に傷つけた事が許せなかった。 「うん。 だから、余計に堪えたっていうか、帰ってきて しばらくは引きこもりみたいな生活をしてて、 最近、ようやく外に出られるようになった ばかりで。 だから、ゆうくんに好きって言ってもらえて、 すっごく、すっごく嬉しかったんだけど、 すっごく嬉しい分、逆にすっごく怖くて、 また裏切られたらどうしようと思うと、 踏み出せなくて、だから…」
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