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◆◆◆
「公平。今、ちょっといいか?」
告別式も無事に終わり、部屋の片隅で食事をとっていた俺は、その声に視線を上げると声の主を見た。
するとそこには、昔の面影を残しつつも立派な大人へと成長した司と隆史がいた。
「……ああ」
面倒臭そうに答えた俺の態度を特に気にするでもなく、二人は俺の前に腰を下ろすと口を開いた。
「「あの時は……っ、ごめん」」
────!?
俺に向けて頭を下げる二人を見て、予想もしていなかった展開に面食らう。
(あの二人が……俺に謝るっていうのか?)
目の前で頭を下げ続ける二人の姿を見て、俺は一度小さく溜息を吐くとその重い口を開いた。
「……いいよ、もう」
(何だか拍子抜けだ)
そう思った俺は、それだけ告げると席を立った。
また何かしてこようものなら、どう鼻を明かしてやろうかと画策していたのだが、どうやらそれは杞憂だったようだ。気分転換にと外での一服を終えると、俺は再び部屋の中へ戻ろうと玄関扉に手をかけた──その時。
「──公平には近付くなよ」
────!?
中から漏れ聞こえてきた話し声に、扉からそっと手を離した俺は身を潜めた。
(……俺の事?)
何やら、俺の話で揉めているらしい隆史と河原さん。俺はその会話に耳を傾けると、二人に気付かれぬよう息を殺した。
「あいつは……っ、死んだ親父にソックリだよ!」
河原さんのすすり泣く声が聞こえた後、パタパタと走り去る音を残して静かになった扉の向こう側。俺はゆっくりと目の前の扉を開くと、そこにいた隆史に向かって声を掛けた。
「……隆史。二人きりで話、いいかな? 色々と聞かれちゃマズいこともあるだろうし、裏庭に行こうか」
突然現れた俺に驚いた顔を見せる隆史。そんな隆史に向けて、俺はゆっくりと口元に弧を描くとニヤリと微笑んだ。
──────
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