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第28話:匣庭。
僕たちは…巡り逢ってきた。
何度も、
何度も。
あの場所で。
あの、蓋をしたように、閉ざされた場所。
『匣庭』…と呼ばれる、あの場所で。
そこは、此岸と彼岸の…狭間。
魂たちが旅立つ前に、その羽を休める場所。
魂たちは、悼む涙に癒され、最愛の想い出に触れ…
彼岸へと旅立つ。
…でも。
そういった涙に濡れる事もなく、
想い出の花に触れる事もなく、
いつまでも…彷徨い続ける魂たちが居る。
それも…
…無数に。
そんな彼らが旅立つには、
送る花が…必要だった。
だから…僕は、生まれ出る。
幾千幾万の人々が、亡くなった人々のために祈り…その力で『匣庭』の蓋が開く、そのときを目掛けて。
花を、手向けるために。
月色の、慈愛の…花。
ただ…僕一人では、その花を咲かせる事はできなかった。
様々な困難を乗り越え、共に縁を結ぶ人が必要だった。
全てを捧げてもよい…という程に、
相手を想うことにより、初めて顕現する花だから。
僕と共に在ったのは、ただ1人の、愛しい連れ合い。
幾度も、幾度も…生まれては、巡り逢うことを、繰り返してきた。
今回も…然り。全ては、大きな必然の流れの中。
僕も、彼女も…世界の中では、大事な役割を担う一つの欠片。
そう…大きなジグソーパズルの、ピースのような物。
僕たちが特別ではなく、1人1人が唯一無二の大切な存在。
誰しもが…老若男女、分け隔てなく…、皆が特別な存在なのだ。
本人の『望む』『望まない』に、関わらず、
その生は特別で、愛おしい…存在なのだ。そして、
僕は…僕たちは、自分の役割を、果たしただけの事。
あの御方…
…大地を胎内に蔵する、あの方に導かれて。
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