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それこそが、魂たちを満たし解き放つ…『鍵』だった。
やがて紫陽花は更に咲き乱れ、蝶たちは次々と旅立っていく。そして最後は…光が、世界を包むように、大きく広がった。
月色の、せかい。
その中で、声を聴いた。
(がんばったね)
年老いた、女性の声。
…ばあちゃん? 蒼太が思った。
(ありがとう、俺は…幸せだったよ)
優しげな、男性の声。
…お父さん? 香織が…思った。
やがて、2人の意識は…月色に呑まれていく。そして、深く柔らかな声が…響き渡る。
慈愛に溢れた、声。
『をんかーかか びさんまえい …そわか。』
(…地蔵菩薩の…御真言…?)
薄れゆく意識の中で、蒼太は…思った。
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