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第1話:雨の静けさとともに。
(あ~、ダメだ~…)
花宮蒼太は、図書館の席で静かに頭を抱えた。
蒼太は、地元の国立F大学に在籍している。専攻は教育。4年生の6月ということで、来月にはいよいよ、教員採用試験が控えている。
F県は田舎のせいもあり、教員の社会的地位が比較的高く、採用試験の倍率も高い。蒼太はあまり器用な方ではないので、割と早い時期から準備をしてきたが…全く手応えが感じられない。
「ふぃ~…」
思わず、黒髪を掻いた。蒼太は顔立ちは悪くないのだが、眼鏡が幾分、野暮ったく見える。どちらかと言えば内向的な気質が、外面の雰囲気に表れているようだった。
(このまま続けていても、埒が空かないな…)
今日はお開き。自主的にそう決めると、荷物をまとめて静かに席を立った。彼の身長は180cm程とかなり高い部類に入るが、細身で大人しい性格のため、どちらかと言えば少し頼りない印象を人に与えた。そして、そんな自分のことが、あまり好きでなかった。
エアコンの効いた学習室を出ると、少し湿気を感じた。空も徐々に暗くなり、本格的に降りそうな気配がする。しかし蒼太は、足取り軽く駐車場へ向かった。何せ車には『相棒』を積んでいる。
◇
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