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剛史は、ひそかに溜め息をつく。だが、そんな蒼太の野暮ったさを、気に入ってもいた。そんな訳で、助け船を出す。
「…で、蒼太はどうしたいん? その女性がホントに存在するかどうかも、分からんのやろ。とことん、調べてみなよ。まず、そこからちゃうん?」
迷っている間は、何も解決策は訪れない。
だったら、自分はどうしたい?
大事なのは、そこだ。それに対して、
「…まぁ、そうだよな」
蒼太は腕組みをしながら、唸るように短く応えた。
そもそも、普通なら(そんな事、有り得ん)の一言で終わる話題である。でも、剛史はじっくり話に耳を傾けた。そして蒼太の気持ちを汲みながら、彼なりのアドバイスを考えた。ここに至るまで、実に30分以上が経過している。その間、話すのが苦手な蒼太のペースを大事にしながら、きちんと聞いていた。
彼は関西の出身で、話す言葉も関西弁である。そのため言葉は軽妙だが、話している内容は誠実そのものだった。周りから慕われているのもよく分かる。
ちなみに、彼は身長160cmと小柄だが、筋肉質のガッチリした体形で、角刈りの容姿はまさしく『兄貴』。それでいて、実は英語科の教員養成課程に在籍しているという、いろいろギャップの激しい男だった。
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