第3話:桜の慈雨。

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第3話:桜の慈雨。

 …数か月の、時が流れ。  グラウンド沿いの並木道、舞い散る桜の花びら。  青空を背景に広がる、その美しい景色に…見惚れた。  蒼太がこの4月から勤め始めたS中学校は、F市の中心街近くにありながら、その恵まれた自然環境で知られている。学校のすぐ側に河川が広がり、それに沿うように立派な並木道が整えられている。 (ん~~~)  両手を広げ、大きく背筋を伸ばす。  昨年度の教員採用試験は不合格だったが、今の学校での職を紹介してもらえた。大学の先輩からは『臨時で色んな現場を経験しておくと良い』というアドバイスを貰っていたので、これはこれで良かったかな…と考えている。  ちなみに、蒼太が紹介されて就いた職は『支援員』という物だった。これは普通学校で、障がいなど、特別な配慮を要する子供たちのために配置される職種である。子供一人一人に寄り添う形で支援することになり、それにより子供達は不自由さを軽減することができた。  実は、蒼太の大学での専攻は『特別支援教育』だった。そのため、この『支援員』という職種は、彼にとってまたとない勉強の機会だった。 「…さて」  校舎へ戻るとしよう。     
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