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九鬼達、国連傘下の特別攻撃隊は世界各地の異形の存在と戦ってきた実戦経験豊富のギース達(傭兵連中)…“ライフルは撃った事あるけど、手榴弾は投げた事のない素人公務員”共のお守というか、水先案内人として、先行投入される予定だった…
そう、だったのだ…どんなプロの兵士にも油断というか“ウッカリ”はある。
外の風景を眺め、降下準備を整える九鬼は眼下の森を見て、不覚にも哀愁の感情に興じてしまった。
(自国に戻ったのは、何年ぶりだろう…あの森、小さい頃に遊んだ山にそっくりだ。思えば、あの頃から、アヤカシはいたんだよな。鼻垂れたガキの俺を見て、連中はどう思っていたのだろう。)
そんな想いと心地よい眠気に近い感覚が起きる。睡眠は充分に取ってきた筈だった。だが、妙な浮遊感を感じた時はもう遅い。
「HEY?クキ?」
戦友の黒人兵と自分の距離感、目線の位置が可笑しい。それも一瞬の事、後はただ下に勢いよく落ちていく体。寝ぼけて足を滑らせた事に気づくのと、味方の兵達が機内でこちらを
指さし、
「アヤカシの攻撃だ!!」
と吠える声を聞きながら、九鬼はパラシュートのレバーを引いた…
あの後、状況を確認するために暗視装置を付けて、本当に良かった。おかげで
目の前にピョコんと出てきたキツネ耳娘に咄嗟の言い訳をかます事が出来たのだ。
だが、問題は…
思案する九鬼の前に脂肪の塊のような巨大な影が被さった。
「コイツ、本当にて、天狗かぁ~?」
何処に口や目があるのか、皆目不明だが、野太い声はしっかり聞こえている。その隣から編み笠を被った猫サイズの獣も3匹、鋭い爪を見せ、こちらを覗く。
手に持った自動小銃には対アヤカシ用の銃弾が詰まっている。四方八方撃ちまくれば
造作なく、コイツ等を殺せるが、一体何匹の敵がいるのか?弾が尽きる前に味方と合流できるのか?皆目検討もつかない。
ここは努めて冷静に、成り行きに任せ“最近の天狗”を演じ続けよう。
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