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どうする?九鬼は惑う。今の状況を見れば、ここにいるアヤカシは雑魚ばかり…自分の
障がいになるとは思えない。銃を撃ちまくれば、たちまち四散し、この後、突入してくる
素人同然の自衛隊員でも楽に勝てそうだ。目の前でピョコピョコ耳を期待に動かしまくる
おとらの母ちゃんがいれば、彼等の特性と自身の力を持って戦えるが、今の状態なら、総崩れは目に見えている。
自分は傭兵。所詮は金で誰の肩にも止まる渡り鳥。コイツ等を助ける義理はねぇ…
(いや、あるか?)
目の前の少女は自分の“嘘”を信じてくれた。その後の推移を考えれば、そうでもないが、
結果として命を救ってくれた。その恩に報いなければいけない。
“九鬼、アニメ展開的に行けば「可愛い、萌え~」と思ったキャラはとりあえず救っとけ!後で絶対いい事あるから!“
ボブの至極適当な言葉がフラッシュバックする。目の前の少女が“可愛い”かは、
長らくアヤカシと戦い、乾いた心の九鬼には分らない。
ボブに確かめようとも、彼はこの戦争が始まった時、何処かに姿を消していた。
だが、迷っている暇はない。人間側の攻撃は今にも始まる。心のボブも昔見た戦争映画の
鬼軍曹風に
“ドウイッと!(それをやれ)ドウイッと!”
を繰り返していた。この最弱の異形達で戦術を組み、作戦を立てるのだ。黙り、暗視装置に手をかける自分の答えを待つようにアヤカシ達が近寄ってくる。
やがて立ち上がった九鬼は背中の降下パックを確かめ、顔の暗視装置に着いた証明を光らせ、言葉を放つ。
「俺に考えがある。」…
危険な戦場から工作員や要人を救出させる緊急手段として“フルトンパック”というモノがある。使用者の背中につけた小型の気球を上空に浮かせ、輸送機に取り付けたフックで引っ掛け、機内に引き上げるモノだ。
アヤカシの攻撃で森の落ちた隊員の1人を捜索する輸送機は夜空に発光信号を出しながら、
浮かび上がった気球を見つけ、フックを用い、隊員の回収を行った。
やたら、重量感のあるフルトンを引き上げた機内は一気に騒然となる。
気球にぶら下がっていたのは巨大な肉の塊の怪物。中にいた全員が銃を構えるが、
そこから響く、くぐもった声に動きが止まった。
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