最近の天狗

8/11
前へ
/11ページ
次へ
「ま、待てぇっ、撃つな~。俺だ。九鬼だ。さっき落ちた隊員のなぁっ…」 「お、お前、九鬼か?一体どうした?」 姿は違くとも、聞き覚えのある声に同僚の黒人兵が怯えたように吠える。 「アヤカシだ。奴等の術にやられたぁっ~、人体をこんな風にしちまう疫病が そこら中に溢れてる。は、早く森から逃げろ、逃げるんだぁ~っ」 不気味な音程でがなる塊に隊員達の間に動揺が走っていく。恐怖が浸透すると同時に、 今度は鼻につく嫌な臭いが身に着けた衣類から立ち上り始める。 追いうちをかけるようにグニャグニャ体を揺らした塊が不気味な音程で囁く。 「その匂いは第1兆候だ。その後、ズクズクに体が溶け出すぅ~。 早く、早くぅ逃げるんだぁ~」 自身の体を見つめ、震えだす兵士達の間を一陣の風と何かに斬られた激痛が走る。 全身を再度改める。傷はない。だが、今の痛みは? 「第2兆候~体の痛みは神経の麻痺ぃ~…」 そこまでが限界だった。隊員達は我先にパラシュートパックを抱え、機外に飛び出していく。 アヤカシとの戦いを幾度も繰り返してきた彼等だからこそわかる経験だ。 (ヤバい奴とはやり合うな。相手は化け物、何があるかわからない。 一回退いて、態勢を立て直す) そう学んできた彼等の行動は早い。最後に残った操縦士2名も外に飛び出したのを確認し、 ぬっぺの中から九鬼は顔を出す。その後から、おとらと川姫、白さんが姿を現す。かまさんは先程、飛び出し、一匹目が風、二匹目が切り、三匹目が治療の一仕事を終え、休憩中だ。 「肉に包まれるのはあまり良い気分じゃないが、とにかく上手く行ったな」 全身の不快感を何とか拭いつつ、九鬼は操縦席に座る。アヤカシ達には、天狗なのに何故、飛ばないのか?の理由に人苦労した。最後はフルトンを見せ、新型の飛行方法と鉄の鳥なら全員を運べる事で納得させたが、上手く行ったようだ。後は任務を果たすだけ… 隣の席に腰かけるおとらに向かって 力強く言い放つ。 「お母さんを助けに行くぞ!」…
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加