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「どうです、なかなかの上玉でしょ?」
鎖、それも対アヤカシ仕様に繋がれた少女を示し、男は下卑た笑みを浮かべる。体は
普通の人間だが、全身の色が緑色だ。この男が案内する地下牢には、彼女のような人間型のアヤカシの多くが監禁されていた。
ボブは“楽しくて仕方ない”と言った表情を何とか装い、強く握りしめた拳を何とか誤魔化す。アヤカシとの戦争で勝利を確認した人類は早くも“奴隷としての使役”を敗残者側の
彼等に課そうとしていた。
捕まった彼等は飼い主の欲望を満たすために使われるか?実験動物のように切り刻まれる。そんな事を許していいのか?否、断じて否だ。だが、今はその時ではない。焦るな。全てを見てからだ。
「こちらが我々の手に入れた最高の商品です。」
男が示した部屋には巨大なケージが置かれ、その中に、ビル程もある大型の獣が眠るように
横たわっていた。これは…
「まさか、九尾の狐?そんな、バカな…」
ボブの呟きに男が満面の笑みを浮かべる。そう言えば、コイツの商売は政府との関わりが強い。この大邸宅兼収容所の外には戦車まで鎮座していた。
これ程の大妖を捕獲するのも納得と言えるか?
「どうです。お値段の交渉は、後程、酒宴の席で…」
(頃合いだな)
こちらに笑いかける男に対し、ボブが行動を起こそうとした瞬間、巨大な衝撃が屋敷全体を襲った…
「ぬっぺは超便利だな。オイッ!」
墜落した輸送機の中で九鬼は吠える。おとらの母が監禁されている屋敷は文字通りの要塞だった。対空砲火の攻撃に火を噴き、そのまま突っ込んだ輸送機の中で彼等が無傷なのは
ぬっぺの肉の塊が衝撃をカバーしたおかげだ(最も、そのおかげで彼の体はだいぶ崩れたが…)
「お、俺はしばらく、お休みだぁ…」
と呟くぬっぺに頷き、駆け寄ってくる警備の兵達の前に飛び出した川姫が大きな声で泣き(真似して、おとらも泣いた)動揺する彼等の肩と足を九鬼が素早く銃で撃ち抜く。
そのまま、のたうつ兵士を飛び越え、崩れた壁からアヤカシ達を侵入させた。
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