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「魔王グレアム! 覚悟っ!」
騎士アスランの剣がグレアムの脇を掠めた。もう魔王の足元は、彼の血溜まりで覆い尽くさるている。
私は、祈りアスランの力を引き上げる。魔道士の炎が立ち上がり、魔王の結界を焼き尽くす。
「このままで、終わると思うなぁ!!」
魔王の咆哮がわたしの耳の劈く。
怖い。魔王の手下が私たちに襲いかかるが、それを他の騎士が払い除けてくれる。でも総て成功するはずもなく、長い爪に腹部を抉られ横たわるもの、鋭い牙に甲冑ごと噛み砕かれるものもいる。
「神様っ!」
そんな私に出来るのは、祈ることだけ。
カランッ──。
聞こえる声に顔を上げると、アスランの剣が床を滑って私の足元まで来た。
「ア、アスラン!?」
剣を失えば、彼の武器となるものは小さな短刀だけだった。その短刀で魔王の剣を受けきれるはずもなく、低いうめき声を上げて彼は城の壁に叩きつけられた。
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