10.最愛の犠牲者

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 まるで主の褒め言葉を待つ忠臣のような男へ、ロビンは(ねぎら)いの言葉を掛ける。 「ご苦労、次の所長は君だね」 「はい」  目の前で起きた惨劇に目を見開くコウキは、全身に絡みつくような血の臭いに俯く。吐き気が襲ってきて、口元を押さえて座りこんだ。 「稀有なる羊、まだ答え合わせの途中だ」  先を促して、何もなかったようにロビンは椅子を引き寄せて腰掛ける。 「13人目の夜が暗かった理由に気づいたかい?」 「……顔見知りだった」 「そう、予想外の相手だ。彼女が最も信じていた自らの夫がターゲットになった。そして穢れを許さない純粋さで、彼女は夫の命を奪う決断をする。ああ……なんて美しい信仰だろう。彼女はオレにとって最上の玩具だ」  満足そうなロビンの微笑みは、慈悲深い神職者に似て……神の愛を説くように柔らかい声音だった。 「知っていてっ、すべて仕組んだのか!?」  激昂したコウキの忌々しげな言葉に、ロビンは軽く小首を傾げて不思議そうな眼差しを向ける。     
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