02.純粋こそ罪

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「無粋なことをするものではないよ、稀有なる羊――良いワインはゆっくり味わうものだ」  くつりと笑い、それきり何も言わない。手にした3枚の写真をベッドサイドのテーブルへ起き、残る資料を拾い上げてコウキへ突きつけた。 「ロビン……」  名を呼んでも、笑って首を横に振るだけ。  今日は何も引き出せないだろう。この事件を解決する方法をロビンから引っ張り出し、犯人を捕まえて次の犠牲者を出さないことが、今のコウキに課せられた任務だった。  研究者として関わった筈が、気づけば国の組織に絡め取られている。己の立場を嘲う余裕もなく、コウキは溜め息を吐いた。 「ひとつ教えてくれ、次の犠牲者は?」 「……今夜、1人」 「場所は……」 「質問はひとつ、だろ?」  本当に興味を失ったように、ロビンは冷たく吐き捨てて背を向ける。珍しく拒絶を前面に出したロビンの応対に困惑しながら、踵を返したコウキは知らない。  ロビンの口元は嬉しそうに三日月に歪められていた……。
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