01.死神への供物

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01.死神への供物

「お断りします」  きっぱりと拒否の意思を示した。だが、それが受け入れられるかは別問題だ。  どうせ無理だろう……他人事のように冷めた頭は淡々と答えを導き出す。  前回ロビンを逃がした嫌疑をかけられコウキに、再度『管理人』を命じるからには、相応の理由がある筈だった。  断れないと判っているからこそ、相手に拒否の意思を伝える意味がある。断ったという形を明確に残す必要があるのだ。  蒼い瞳が正面の男を貫く鋭さで睨み付けた。しかし平然と受け流した男は、深い溜め息を吐き出す。 「君の嫌がる気持ちは理解できるが、何しろ『あれ』からの指名だ。諦めてもらおう」  死神と二つ名を得た、連続猟奇殺人犯―――ロビン・マスカウェル。  公的には死刑を執行された彼だが、その頭脳と観察力、洞察力を買われて国の研究機関に監禁されている。しかし数ヶ月前に一度脱走し、再び自らの意思で戻った。  FBIやCIAの調査結果を淡々と仕分けて、ターゲットの行動を先読みする能力だけを見るなら、ロビンは優秀で得がたい存在だ。そんな彼が何を考えて脱走し、戻ったのか。  FBIの調査官は読みきれなかった。     
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