03.暗い月

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03.暗い月

 予言は当たった。  朝になって発見された死体の写真を前に、コウキは深い溜め息を吐く。あの場でロビンから聞き出すことが不可能だったと理解していても、死ぬと分かっている人間を助けられる手段が目の前にあった事実が心を傷つけるのだ。  もう少しロビンを問い詰めていたら……そう思う反面、彼の機嫌を損ねて一切の協力を断られた場合も考えてしまう。  研究対象としては申し分ない存在――コウキ自身も興味を持っている男だ。  犯行現場は別の場所なのだろう。  常に血が乾いた死後硬直後の四肢を並べる犯人は、淡々と作業を行ったと思われる。  芝を踏み荒らした後もなく、慌てて立ち去った車や人影の目撃情報もなかった。  ふと……写真の一部が気になる。 「これは……」  手がかりになるか?  両腕と両足が平行に並んでいる。右脚と右手は同じ東へ、左脚と左手はその逆である西へ向けられていた。もちろん左手首はないから、切断面が西を指しているが……頭の向きが違う。  今までの現場写真を慌てて引っ張り出した。     
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