Episode.1 SCRAP

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 初めての道をよく分からないまま走る。どこを目指せばいいのかすら見当もつかないけれど、足を止める訳にはいかなかった。  背後からは追っ手の足音が響き、時々怒鳴り声も混ざる。裸足のまま長い時間走っていることで、足の裏の皮膚はボロボロになり、鋭い痛みが襲ってきた。  次第に体力も限界に近付いてきて、覚悟を決めようとした時、急に側の家のドアが開き、そこから伸びてきた手に引っ張られたところで、僕の意識は途絶えた。              *    *    *  夢を見た。  温かい家族の夢。  僕は優しいお父さんと綺麗なお母さん、仲のいいお兄ちゃんと一緒にご飯を食べている。  テーブルの上にはお母さんが作ったご馳走が並んでいて、食べながらみんなが僕に話しかけてくる。  『ミハエル、今日の学校は楽しかったかい?』  『ミハエル、ご飯美味しい?』  『ミハエル、明日友達を誘って一緒にサッカーをしよう!』  夢だと分かっていても嬉しくて泣きそうな気分になった。それと同時に自分に呆れてしまった。  一生手に入れることなんてできない幸せを夢見る僕に……。             *     *     * 「目、覚めたか?」  気が付くと、一対の青っぽい灰色の目が僕を覗き込んでいた。驚いて思わず飛び上がると、ゴツ、という鈍い音と一緒に頭に激痛が走った。  痛みに頭を抱えながら周りを見ると、すぐ側にいた1人の男の人も頭を抱えていた。 「ーーっ! こんの野郎、せっかく助けてやったってのにその礼がこれか??」 「ご、ごめんなさい……」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!