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時は平安。
京の都、大内裏では、華やかな文化が次々と花開き、栄華を極めた貴族たちは、自らの広大な邸で優雅な宴を開いては自身の権力を示すのだった……
…なーんて、そんな堅苦しい前口上はもういいわね。
その"栄華を極めた貴族"のひとりであるはずのアタシの召喚主は、優雅なんて縁遠い程、さっきから真っ青になって茫然自失の体なんだから。
「おーい。敦宣、いきてる?」
「あの御方と宿直…? ど、どうしましょう…もし範子さまに何かあったら…。いえっ、誉なる侍従の君たる範子さまを決して侮っているわけではないのです。けれど、あの御方? あの御方ですよ? あぁ、日頃から常々思っておりましたが、範子さまは御自分の見目がどれ程魅力的なのかお分かりではないのですから…!」
「こりゃ重症だわ」
アタシの声も届かないくらい衝撃を受けているみたい。
まァ、あれは確かに…と、敦宣に同情しつつ、先程の会話を思い出してみることにしましょうか。
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