2.

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「わかったわかった。ひとまずアンタたち抱き合いなさい」 「ええ!」 これには敦宣と範子の驚愕の声が揃った。だが胡蝶も冗談で口にした訳ではないようだった。 「敦宣は身体を密着させた状態で笛を吹きなさい。この子もおそらく『逆転の者』よ。詳しい説明は後! さあ早く!」 「ええいもう、わかったよ!」 範子は敦宣の背後から抱き付いた。 勢いが過ぎたのか「うっ…」と敦宣がか細く呻く。だが直ぐに体勢を立て直し、彼は笛を口許へあてた。 再び流麗な音色が響き渡った。 間近で聴いた範子がはっと瞠目する。 音色が先程と明らかに違うのだ。 これは…。 と、吹き初めて幾ばくもしない内に、あやかしたちの様子が変わった。 あやかしたちの臨戦態勢だった姿勢が緩んだのが気配でわかる。ひょろりと長い腕がだらりと垂れ下がった。 すぅ…と気配が薄れていく。 やがて完全に妖しき影は姿を消した。 風の吹き抜ける音が聞こえるほどの静寂が訪れる。 「竜が増えた…」 なので範子の呆然とした声はよく聞こえた。 「ぶはっ」 頭上で盛大に胡蝶が噴き出した。 むっとした範子がひらひら舞う蝶を睨み付ける。 「――――で? アンタはいつまでうちの敦宣に抱き付いてるわけ?」 言われてはたと気付く。敦宣に思いきり抱き付いたままだと。 「ああっ…と! ごめんね!」 「い、いえ…」 範子が、音がしそうな勢いで慌てて離れると、敦宣は恥ずかしそうに目を伏せて俯いた。なんて女子力なんだ。流石は可憐な姫の名を欲しいままにしている…いやいや、今はそうじゃなくて。 範子は咳払いをした。
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