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聞かれて初めて、範子は自らの身体に何の異変もないことに気付いた。
「お? あれ、全然平気だ」
その場で跳び跳ねたり、手足をぶらぶらとさせても異常は感じられない。以前は立っていることもままならなかったはずだが。
「念のため、わたくしの部屋で休んでいってくださいね」
心配してくれる敦宣のお言葉に甘えて頷く。
「では引きあげましょうか」
敦宣が踵を返す。
その瞬間、
「………っ」
「敦宣…!」
ふらりとその身体が傾いだ。
咄嗟に範子が支える。
「大丈夫?」
すぐに体勢を立て直した敦宣が、ゆるゆると頭を振る。
「えぇ…、少し立ち眩みがしただけです。範子さまに偉そうに申しましたが、わたくしの方が参ってしまっていたようですね…」
「あやかしを祓ったのは敦宣だもの。きっと私よりよっぽど消耗してるんだよ。今日は私が支えて歩くよ。ゆっくり行こう」
「ありがとうございます」
敦宣は力なく微笑んだ。
いつかとは逆で、範子が敦宣を支えて御所を後にする。その道すがら、範子は口数の多いはずの胡蝶が一言も話さないのが少し気になった。
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