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『あと怪我で色々とご不自由だろうから、私も明日からマンションに泊まりますね』
細切れに届いたメッセージを読みながら、一砥は最後の一文にふっと表情を緩めた。
「これこそ怪我の功名だな……」と、一人で呟く。
そして『悪い。ちょっと寝ていたせいで返事が遅れた。迎えの時間はそれでいい。奏助が車を出してくれるなら甘えよう。人気カメラマンのくせに暇しているようだしな』と、いつもの自分らしい返事を送った。
この時間ならもう寝ているかと思ったが、花衣はすぐに返事を送って来た。
『分かりました。寝ているところを邪魔してごめんなさい。もう休んで下さいね。私も今から寝ます』
花衣らしいその言葉に、「別に君のせいで起きたわけじゃない」と返したかったが、そうすると母親の見舞いについてまで言及しなければならない気がして、結局その言葉は喉の奥に仕舞った。
『ああ、俺も寝る。おやすみ』
素っ気ない言葉を送信すると、すぐに花衣から『おやすみなさい』と、猫がベッドで寝ている可愛らしいイラストが送られてきた。
そのイラストを目を細めて眺めた後で、一砥はスマホの画面を閉じた。
*****
午後十時に一砥に送ったメールの返事は、午前零時前になってようやく届いた。
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