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レイズが目配せすると、タドルは肩をすくめた。教師らが大広間の前にある専用の席に次々と着き、進行役の教師が口火を切ったことで説明会がはじまった。いよいよ学園の生活が始まる、と新入生徒どの顔をとっても心が躍っているようだった。
校舎の構造、学園の組織、学園内で禁じられていること等、約一時間に渡る説明会は終盤にさしかかっていた。
「最後に最重要事項について説明します」
との教師の声に、疲れてきた生徒達は今一度姿勢を正して前を見据えた。レイズは終始真面目に聞いていたが、仕方ないとばかりに隣で舟をこぐタドルを小突いてやった。
「今から各人にあるものを配布します」
進行役の教師が言い終わらぬうちに、箱を持った複数の教師が後方の扉から現れ、慌ただしく一人一人に正方形の白い箱を配っていく。その謎の箱が気になるのか、生徒たちがざわめき始める。
「静かに! 私が指示するまで箱には触れないよう!」
その教師の力強い声にざわめきが収束していく。しばらくして全員の手元に配布されたタイミングを見計らい教師の指示が飛ぶ。
「よし、配布した箱を開けて良い。だが中の物には触らずに待機すること!」
レイズは周りの動きを見てから、躊躇いながらも箱のふたへ手をかけ上へ引き上げた。そこには純白の腕輪がまるで眠るように緩衝材の中に埋もれていた。
「これは『マディル』といいます。みなさんが安心して魔法を習得するために、魔法の発動を制御する機能が内蔵されています。この学園に入学した生徒に着用が義務付けられているので、みなさんもここで左腕に着用してください。一瞬光るだけです。怖がることはありません」
レイズとタドルは顔を見合わせる。怖がることはないというセリフが逆に生徒を怖気づかせたのだ。誰か付けないかと、ほとんどの生徒が探り合い、装着に躊躇している。だがそれもつかの間、前方の端から眩い光が数秒あがり、驚愕の声と悲鳴に似た甲高い声により講堂は一気に騒々しくなる。
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