第1章 聖セイバー教魔法学園

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「いいから、腹くくるぞ」  そう言いきるかどうかの内に、レイズは左腕を輪の中に滑りこませた。慌ててタドルも腕輪を手に取り同じようにしたのを見届けると、右手で繋ぎ目をパチンとかみ合わせる。すると、腕輪が円をなぞるように白く輝きだし、一周すると一層光が強まる。  徐々に光が弱まると、それはただの純白な腕輪に戻っていた。そして繋ぎ目の痕が一切消えており、もはやどうやっても外すことができなくなっていた。一歩遅れて装着したタドルだったが、光が収まってもなおいつまでも目を硬く閉じている姿にレイズは吹き出し笑いをしてしまい、タドルから軽く小突かれた。  新入生全員のマディル装着が確認できた後、全体説明会は終了した。だが早速次に学年八クラスを二つに分けた『四クラス合同授業』なるものが行われるということで、それぞれ割り当てられた教室へ移動することとなった。合同授業では前半の貴族が所属しているAからDのクラス、後半の平民が所属するEからHクラスというように分けられるため、同じ教室のレイズとタドルは自ずと一緒に移動することになった。 「なあ本当に、お前なんで代表断ったんだよ」  生徒の流れに乗って廊下を歩く中、未だ納得できないタドルがその件に触れてきた。 「ここをどこだと思ってるんだよ。貴族が資金を提供して、その子供を挙って入れたがる聖セイバー教魔法学園だぞ。そんなところで金も払わずに入った平民が偉そうに目立ってどうする」 「首席とって基金枠で入ってきたんだから誉められてもいいだろ」  レイズはなるべく周囲には聞こえないような声で話したのだが、タドルはおかまいなしで言いたい事を口走る。そう言って貰えるのはありがたいが、タドルが思っているほどこの学園における自分達の立場は自由なものではないこともまたよく分かっていた。
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