第1章 聖セイバー教魔法学園

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「お、俺らはなにもしてねえよ」  理不尽にも説教を食らうと察したタドルが口をとがらせる。 「私は君らを叱るつもりはなかったんだが、その教師に対する言い方だけは改めてもらおうか」 「すいませんでした」  一層強まる眼光にタドルは反射的に謝罪の意を述べた。 「まあいい。怪我はないのか」  痙攣でもしているかのように、二人揃って小刻みに頭を上下させた。すると女教師は廊下の奥を一瞥し、一つため息をつく。 「カイン・バティストは、君が首席をとったのが相当気に食わないんだ。ま、仕方のないことだ。彼には一族からのプレッシャーがあるんだからな」  絡めていた腕を解くと、女教師は「来なさい、君たちの教室はこっちだ」と言い身を翻して颯爽と歩いて行く。レイズとタドルは顔を見合わせると、足をもたつかせながらもそのすらりとした背を追った。 「こんなこと言わなくても知っているとは思うが、彼はバティスト公爵家に生を受けた一人だ。その歴代のバティスト家は全て聖セイバー教魔法学園へ首席で入学しているわけなんだが」  しばらく黙々と歩いていたところで、足を止めることなく女教師は口を開いた。 「それがまさか、どこからともなく来た生徒にその座を奪われるとはな」  レイズは顔をこわばらせる。自分でもこんなことを望んだわけではなかったのだ。ただ昔から魔法の書物を読むのが好きで、周りの同い年の子が魔法の“ま”の字も知らない頃から魔法の原理を理解していただけだった。  平民にも入学の門扉を開いているこの学園は毎年国中に入学の案内を配布している。プレビス学生支援基金や養子制度を利用すれば孤児のような子でも入学可能と謳っているのを小さい頃から知っていた。  ついに自分も高等学園への進学も考えるようになった頃、受験を勧められたのだ。最初は全く乗り気ではなかったが、一番の親友タドルも面白そうだから受けようというので受けてみただけ。やるなら本気で基金枠を狙おうというノリでやったところ、タドルはギリギリのところだったが、レイズは余裕で枠に入ってしまったという訳である。
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