第1章 聖セイバー教魔法学園

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「君は魔法をすでに使えるんだろうな」 「あー少しならできる、かもしれないです」  レイズは答えにためらったが、きっとこの人に嘘をいっても見透かされると思い、遠慮がちに肯定する。 「さすがだな。とはいえ、試験であれだけの回答をすれば、使えてもおかしくはないと思っていたよ」 「お前、一体なにやったんだ」  小声でタドルが聞いてくるが、まったく心当たりがない。レイズの中では”普通”に回答を記入したつもりだったのだから。 「教養分野は普通だったよ。専門分野がな」  学園の受験区分は戦闘術が専攻となる『バイスター』と魔法が専攻になる『パフェクター』の二つがある。それぞれの区分の受験科目は共通教養分野と専門分野に分かれ、専門分野はバイスター区分では戦闘術の実技試験を、パフェクター区分では魔法に関する筆記試験が行われる。魔法の実技がないのは受験対象年齢では通常まだ魔法は使用出来ないためだ。故に筆記も専門的な内容は問われず、知っていることを自由に論述形式で回答するような構成になっていた。だが、採点は傾斜配点方式になっており、専門分野での配点は共通教養に比べ二倍以上。専門で化けて合格ということも可能なのだ。 「専門分野の最終問題に“あなたが知っている魔法の構築方法について答えよ”という問いがあったのは覚えているか」 「あ、はい。そういえば試験が終わった時、周りの人は何をかいたらいいか分からなかったって話してましたけど」 「そう、分からなくて当然の問題だよ」  所謂力試し問題。他の問題よりも遥かに色が違うその問いにレイズも思わずペンが止まってしまったのを覚えている。 「あれの模範解答を要約すれば “発動する魔法形態をイメージしながら、まず適切な言葉を用いて属性を指定する。指定の属性への転換が終了したところで発動させる形態の詠唱区を発声することで魔法が構成される”だ。 これに少し脚色して、例えば知っている詠唱区とかを説明に出したりすれば満点といったところだった」 「え、それだけでよかったんですか」  思わずレイズの口から滑り出た言葉が全てを物語っていた。
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