第2章 氷の女教師

4/26
711人が本棚に入れています
本棚に追加
/708ページ
 今のところマディルに詳しく触れるつもりはないのだろう。腑に落ちぬまま、レイズは左腕にとりついた純白の腕輪に目を落とした。 「そもそも君たちはまだ魔法が使えないはずだから気にすることでもない。さて学園の授業についてはこの辺にしておこう。私からは以上だ」  教壇から下りて、壁側へ歩いて行く。そこにいた笑顔を向けるヒューネの隣に立ち、小声で何か話しているようだった。  ヒューネが彼女のことを「エリザ先生」と名前で呼んでいたことから、二人は親しい仲なのだろうか。そんなことを考えている内に、教壇へあがった四十代後半に見える女性は、さきほどの黒い教師とは打って変わって優しい笑みを浮かべていた。 「さて、それじゃあ皆さんが今日から暮らす寮について説明しましょうか。私は寮母のマルサです。入学の書類に入っている入寮案内を出して下さい」  それから優しく温かな声による寮生活についての説明を小一時間受けた。終了するころには窓の外が赤く色づき、そのまま解散となり配布された紙袋に入った教科書を持って寮へと向かった。  校舎を出て左奥に立ち並ぶ寮舎のC棟六一〇号室がレイズとタドルがこれから三年間暮らす”家”だ。期待に胸を膨らませる生徒の波にもまれて、二人はついに部屋の前にたどりついた。レイズが渡された金色に輝く鍵で部屋を開けると、タドルが一番乗りで入りこんでいった。 「うわ、超きれいじゃねえか!」  そこは二人部屋の広いワンルーム。両壁にベッドが、その奥にそれぞれの机と本棚がある。予め配達しておいた個人の荷物は脇に寄せられていた。  他の部屋も全て二人部屋になっており、トイレ風呂等の水回りは共同になっている。全寮制であるため、貴族ももれなく寮に入っているのだが、この棟とは別のA棟、B棟が充てられている。ここの寮も十分綺麗ではあるが向こうの建物はどうなっているか、無駄とは分かっていながら考えてしまう。
/708ページ

最初のコメントを投稿しよう!