第2章 氷の女教師

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 タドルは重い紙袋を左側の机にどっかりと乗せると、奥の大きな窓を開け放ち外の景色を眺め始めた。勝手に場所が決まってしまった感があるが、レイズは右側に自分の荷物を寄せると、真面目よろしく教科書を取り出してペラペラとページを繰り出した。 「そういえば、シェイミ―は――」 「レイズ、腹減ったな」  話題を振る前から交わされるのはいつものことだ。そして口を開けば飯の話が出てくるのも。レイズは部屋をめぐらして壁に掛けられた時計を見つける。確かに頃合いとしては外してはいないようだ。 「じゃ、学園生活初の飯に行くか」  平民専用寮の男子棟(C棟)と女子棟(D棟)は中央の共同棟で繋がっている構造になっており、そこにラウンジ、食堂、学習室がある。もちろん女子棟は男子禁制、逆も然りであるが、ここでは庶民クラスに配属している全学年の生徒が会することができる。  食堂にはすでに生徒が集まっていた。全学年生徒の半分が使うスペースだけあり、席には困ることはなさそうだが、メニューを選ぶための行列に加わるのは避けられなかった。 「レイズ! 大盛もいけるらしいぞ」  この類においてのみ彼の情報収集力に勝ることはできない。メニューは日替わりで数種類用意されていて、時にはバイキング形式にもなる等、食堂のシステムを瞬時に完全網羅し、こちらから求めなくともご丁寧にタドルは解説してくれた。 「なるほどな――」と口を挟んだのはレイズではなかった。 「おっと、思わず聞き耳立てちまったぜ」  振り返ると、そこに二人の男子生徒が。赤毛をツンツンと立たせ、燃えるような赤目をもつ長身の生徒と、その後ろで身を縮こませている低身長で癖っ毛の茶髪に丸い眼鏡をかけた生徒だ。 「俺、ガゼル・ハモンド。こっちは昔からのダチで、フレッグ・ハリスンだ」 「は、はじめまして」  快活のいいガゼルがついでとばかりに片方の紹介までしてしまったため、フレッグという名の茶髪の少年は頭をペコペコ下げるだけだった。
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