第12章 あの雨の日の約束を

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 リーヴァスのことは大嫌いだ。いつもいけ好かない白けた顔で楽しい雰囲気を台無しにするのだ。加えて、頭が良いためにこちらの言い分を全く物ともしないし、喧嘩になっても力が互角だからただ疲れて終わるし。つまり何をもってもリーヴァスには勝てないのだ。 「あ、ター君ようやく帰ってきたー!」  ハウスの門が見えたところで、道の真ん中で立っていた一人の少女がこちらに気づいて大きく手を振った。だが、その子の微妙に下がり気味だった語尾に、嫌な予感しかしない。 「またリーヴァス君と喧嘩したんでしょ」 「してねえよ」  門までたどり着くなり、説教を始めるつもりなのか、シェイミ―が腰に手を当てて仁王立ちになる。ちなみに姉弟たちは、タドルを置き去りに家の中に速攻で駆けこんでいった。そのまま、お菓子を食べようとしてミレイさんに叱られるがよい。 「もう、十歳になったんだから、いい加減に仲良くしてよ」 「嫌だよ。あんな奴、ハウスにいるから話してやってるけど、学校で会うだけのヤツだったらひとっこともしゃべんねえよ」 「これからもずっと一緒にいるんだからさ」 「ずっとなんて御免だよ! あいつがハウスにずっといるんなら、とっとと出てってやる」 「そ、そんなこと言わないでよ!」  シェイミ―がいきなり大きい声で叫んだ。こちらを睨みつけている緑色の瞳が一瞬潤んだ。 「いや嘘。今の嘘だから。分かったから泣くなよ」 「泣いてないわよ!」 「今泣こうとしただろ」 「もう、ター君うるさい!」  と、ひとしきり騒いだところで、そっぽを向くと、肩を怒らせながらシェイミ―も門へと向かってゆく。 「俺の人生、こんなもんなのか……」  もちろんシェイミ―には聞こえないように呟いたのだが。本に出てくるような気の合う相棒と出会ったり、新しい世界に踏み込んだり、そんなことを夢見たところで、今の生活を考えればそんなのは絶望的だ。  だが、タドルの人生はこの瞬間に変わった。一つ溜息をこぼし、シェイミ―に続いて中に入ろうとした時だった。 「レナード! レナード!」  焦燥感漂う声が道の向こうから飛んで来る。立ち止まってそちらを向いたとき、タドルは最初誰が走ってくるのか分からなかった。
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