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「タドルくん! レナードを呼んでください!」
「え……う、うん!」
ただならぬ様子に何が何だか分からないまま、蹴躓きながらハウスの玄関へと走る。そこにいたシェイミ―にも構わず、玄関の扉を開け放った。
「レナードさん!」
「どうした! なんかアルヴィンさんの声が……!」
今にも玄関から飛び出ようとしていたアルバートとミレイと鉢合わせる。だが、アルバートは視線をあげるなり、言葉を失って硬直した。続いて後ろから迫ってくる足音と荒い息遣い。
恐る恐る振り向けば、そこにはぜいぜいと息を切らしたアルヴィンと、その両腕に、ぐったりと抱きかかえられた見知らぬ子供と――二人の服を染め上げる赤黒い色。
「な、なにがあったんです!」
扉を跳ね飛ばして二人がその元に駆け寄った。
「河原に、倒れていました……酷い怪我です。早く、早く医者を!」
「わ、分かりました! ミレイ、マイルズ先生は俺が呼んでくるから、その間に応急処置を!」
「え、ええ!」
レナードはそのまま駆け出してあっという間に門の向こうに消えた。ハウスの中に戻ったミレイがお湯を沸かしてだのシーツを持ってきてだの何か叫んでいるが、タドルの視線は目の前の非日常の光景に張り付いて、その場から動けなかった。
アルヴィンが1度その子を抱え直すと、ハウスの中へと駆け込んでいく。
「ミレイさん! 1階に空いてる部屋は!」
「今は……あの、二階の奥の部屋なら! アルヴィンさんの部屋の二つ隣です!」
息付く間もなくアルヴィンが廊下を走ってゆく。その後ろ姿を呆然と見ながら、ふと視線を下ろせば、玄関のたたきから廊下へ向けて、赤い靴跡が残されていた。その有様に今更ながら体の芯から震えがこみ上がってくる。腹の奥から恐怖が弾け飛ぶ、寸前のところで、タドルは何かを耳にして振り返った。
「うぅ……」
そこに、肩を震わせて木の影にうずくまったシェイミーの小さい姿が見えた。
そりゃあ、強気だけどシェイミーも女の子だ。タドルは目元を力強く拭うと、ゆっくりシェイミーに近づいた。
「なあ、中入ろ……」
顔もあげずに首を振る。それでもタドルは無理やり手を引っ張る事はしなかった。ただ、黙ってシェイミーの前に膝をついて手に触れただけだった。
「だ、大丈夫だよ……アルヴィンさんは、だれでも助けてくれるじゃんか」
「でも、でもぉ……」
ただただ泣き続けるシェイミー。その時のタドルでは、小さい手に手を重ねてやる事しか出来なかった。
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